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総合TOP > 連載 > ジャンル虎の穴 > Vol.17 AOR-アダルト・オリエンテッド・ロック特集


ジャンル虎の穴/さまざまなジャンルがはびこる洋楽の世界。このジャンルってどんな音楽?「ジャンル虎の穴」は、毎回ひとつのジャンルをセレクトして、そのジャンルの成り立や、代表アーティストからマニアックな裏名盤までを紹介するコーナー。これであなたも音楽通に!
Vol.17 AOR-アダルト・オリエンテッド・ロック特集
>>AOR代表アーティスト>>AORおすすめ
70年代後半から80年代にかけて、日本にブームを巻き起こしたAOR=アダルト・オリエンテッド・ロック。田中康夫の『なんとなく、クリスタル』がベスト・セラーとなり、文中に出てくるAORアーティストには詳細な解説が付いていたのを思い出す。元々、AORとは“アルバム・オリエンテッド・ロック”の意味で、シングル・ヒットを狙わないアルバム主体の音楽を指していたようだが、日本では、大人向きの洒落た音楽ということで“アダルト”の言葉に置き換えられた。

ソウルやジャズのソフト&メロウな要素を取り入れた、都会的な音楽がAORのイメージであるが、フィリー・ソウルの影響やA&Mレーベルに見られたトミー・リピューマやクインシー・ジョーンズのソフィスティケイトされたアレンジ、スタジオ・ミュージシャンの交流など、AOR形成までの水面下の流れはいろいろと見出せる。だが一般的には、76年に発表されたボズ・スキャッグスの『シルク・ディグリーズ』、ジョージョ・ベンソンの『ブリージン』、マイケル・フランクスの『アート・オブ・ティー』あたりがAORの口火を切ったとされている(当時は、まだシティ・ミュージックなどと呼ばれていた)。ボズ・スキャッグスのバックを務めたスタジオ・ミュージシャン達がトトを結成し、スティーリー・ダンが有名スタジオ・ミュージシャンをパズルのように組み合わせてアルバムを制作したりと、クオリティの高い音楽性(商業性も兼ね備えていた)が注目を浴び、AORは音楽シーンの一大潮流となっていく。

スティーリー・ダンを抜けたマイケル・マクドナルドがドゥービー・ブラザーズに加入して、「What A Fool Believes」が世界的な大ヒットとなったのが79年。ランディ・ヴァンウォーマー、J.D.サウザーなど日本で馴染み深いアーティストが揃ってヒットを放つのも同じ79年だ。翌80年には、彗星のごとくクリストファー・クロスが現れ、AORを陰で支えたといっても過言ではない、デヴィッド・フォスターとジェイ・グレイドンによるユニット“エアプレイ”がデビューする。

こうして、83〜84年頃まではAORの隆盛が続くが、ある意味ファッション化しすぎたAORは次第に下火となり、産業ロックの大きな波が押し寄せる。ただ、ブラック・コンテンポラリーやフュージョンもAORと同じ幹から生まれた音楽であるといえる。クラブ・シーンで、当時のAORがネタに使われるのも常識となっている現在、AORの名作を新たに体験するのは決して無駄ではない。

(Text/遠藤哲夫)
■AOR代表アーティスト
●Steely Dan   『Aja』 1977
AORを代表するアーティストといえば、まずスティーリー・ダン。ドナルド・フェイゲンとウォルター・ベッカーのソングライター・ユニットとなり、スタジオ・ミュージシャンを駆使して作り上げた後期スティーリー・ダンの音楽方法論がそのままAORの究極の姿ともなっている。『滅びゆく英雄』から『エイジャ』『ガウチョ』の3枚のアルバムは、どれも完璧である。特に『エイジャ』は、参加ミュージシャンのプレイひとつひとつが最高傑作といえるもの。
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Peg  >>試聴
  Aja  >>試聴  
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Donald Fagen   『The Nightfly』1982
●Michael Franks   『Sleeping Gypsy』1977
73年にマイナー・レーベルからデビュー作をリリースしているが、トミー・リピューマのプロデュースによる『Art Of Tea』(75年)で一気に注目された。その洗練されたサウンドとつぶやくようなボーカルは、メジャー2作目『Sleeping Gypsy』に収録された「Antonio's Song」で、マイケルのイメージを決定付けた。ブラジリアン・テイストを散りばめたAORの傑作を次々に発表した彼は、実は自然派でもあり、今のジャック・ジョンソンなどにつながるものも感じる。
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Antonio's Song  >>試聴
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『The Art of Tea』1975
●The Doobie Brothers   『Minute By Minute』1980
豪放なギター・サウンドと男臭いトム・ジョンストンのボーカルで人気バンドだったドゥービー・ブラザースが劇的に変化するのは、マイケル・マクドナルドが主導権を握った『Takin’It To The Streets』から。そして、時代に呼応したAORバンドとして頂点を極めたのが『Minute By Minute』である。マクドナルドのソウルフルなボーカルが冴える「What a Fool Believes」は時代を代表する曲となった。都会的センスは次作『One Steop Closer』でも満喫できる。
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What a Fool Believes  >>試聴
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『Takin’ It To The Streets』1976
●Christopher Cross   『Christopher Cross』 1980
AORという呼び方が確立したのが80年。それは、クリトファー・クロスがデビューした年でもあった。全米No.1を含む4曲をヒット・チャートへと送り込み、グラミー賞を独占したのがこのアルバム。透明感のあるクリスタル・ボイスで、日本でもカフェ・バーをはじめ、いたるところで流れていた記憶がある。当時は、ビリー・ジョエルと並んで親しみのある存在だった気がする。映画『アーサー』のテーマ曲だった「ニューヨーク・シティ・セレナーデ」も大ヒットした。
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Ride Like The Wind  >>試聴
  Say You'll Be Mine  >>試聴  
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『Another Page』 1983
■AORおすすめ
Bobby Caldwell  『Bobby Caldwell The Best』 1989
ボズ・スキャッグスの『シルク・デイグリーズ』と並んで、ボビーの『イヴニング・スキャンダル』のアルバム・ジャケはAORのイメージを代表するものだった。スティーヴィー・ワンダーの白人版のようなエモーショナルなボーカルと、トロピカルなサウンドで日本でもいまだに人気が高い。
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風のシルエット  >>試聴
カム・トゥ・ミー  >>試聴
Boz Scaggs  『Fade Into Light』1996
AORブームの火付け役となったボズ。後にトトを結成するメンバーが顔を揃えた76年の『シルク・ディグリーズ』が、AORシーンそのものの基礎固めの役割を果たした。本作は後年のアンプラグド盤であるが、「Harbor Light」や「Simone」も収録。ビター・スウィートな味わいは変わらず。
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We’Re All Alone  >>試聴
Lowdown(Unplugged)  >>試聴
Chicago  『Love Songs』2005
ブラス・ロック・グループとして69年にデビューしたシカゴ。「流血の日」や「クエスチョンズ67/68」などのメッセージ色の強いグループだったが、徐々にソフィスティケートされ、82年の「素直になれなくて」の大ヒットでバラード・グループに。デヴィッド・フォスターの手腕が光る。
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Hard To Say I'm Sorry  >>試聴
Will You Still Love Me?  >>試聴
Hirth Martinez  『Hirth From Earth』1975
独特なしゃがれ声とユニークなアコースティック・グルーヴで、アルゾなどのファンにも受けそうなのがこのハース・マルティネス。当時発売は、ザ・バンドのロビー・ロバートソンがプロデュースしていたことで、マニアの間で話題となった。「Altogether Alone」は今聴いても名曲!
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Altogether Alone  >>試聴
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Brian Elliot  『Brian Elliot』1978
ケニー・ランキンやルパート・ホルムズあたりのファンにおすすめの幻のアイテム。ワーナーの名盤探検隊のシリーズで念願のCD化となったが、現在入手困難。トトのメンバー等をバックにクオリティの高いシティ・ポップの名盤。マドンナの「パパ・ドント・ブリーチ」の作者としても知られる。
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Tickets To Rio  >>試聴
Queen Of Clowns  >>試聴
Robbie Dupree   『Robbie Dupree』1980
邦題「ふたりだけの夜」の「Steal Away」は、完璧なAORとして現在も高い評価を受けている名曲。マクドナルド在籍時のドゥービーに限りなく近い感じもするが、「Hot Rod Hearts」などでは、ウェスト・コーストらしい爽やかさもふりまく。ビル・ラバウンティと共にAOR必須アイテム!
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Steal Away  >>試聴
Hot Rod Hearts  >>試聴
Rickie Lee Jones  『Rickie Lee Jones』1979
ジャケット写真がかっこいい!「Chuck E's In Love(恋するチャック)」が大ヒットしたが、「Young Blood」や、ロウエル・ジョージが取り上げた「Easy Money」など名曲多し。 ジョニ・ミッチェルがダメな人も、リッキーなら大丈夫。物憂げだけどどこか無邪気な不思議な魅力が詰まっている。
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Nicolette Larson   『Rhino Hi-Five』1978
天心爛漫な少女といった感じのニコレッタ・ラーソンのデビュー作。ニール・ヤング作の「Lotta Love(溢れる愛)」が大ヒットした。アルバムを通して聴くともっと凄い名盤なのだが、リトル・フィート的なノリを持った「Rhumba Girl」や、ライ・クーダー的な「Mexican Divorce」も見事。
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Joni Mitchell  『Court and Spark』1974
もはや天才の域に達したジョニ・ミチェルの、フォークからロック/フュージョン・サウンドへの橋渡し的なアルバム。バックを務めるのはトム・スコット&LAエクスプレスの面々。トップ10ヒットとなった「Help Me」をはじめ、その自由で流れるようなサウンドに周りの空気も変るはず。
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Free Man in Paris  >>試聴
Grover Washington Jr.  『Winelight』1980
CTIレーベルで既にスター級の活躍をしていたグローヴァー・ワシントンJr.であるが、AORファンに馴染み深いのは、何といってもビル・ウィザースのボーカルをフィーチャーした「Just The Two Of Us」。バックをスタッフの連中が務め、スムース・ジャズの原点といえるメロウさは素晴らしすぎる。
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Just The Two Of Us  >>試聴
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George Benson  『Breezin'』1976
こちらもジャズ畑でヒット作を連発、ウェス・モンゴメリーの後を継ぐといわれたテクニシャンであるが、自分で歌ってしまった「This Masquerade」(レオン・ラッセルの曲)が大ヒット。AOR/フージョン・ブームの火付け役となった。ギターとボーカルのユニゾンが職人芸としてメロウに響く。
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This Masquerade  >>試聴
Breezin'  >>試聴
The Manhattan Transfer  『Extensions』1979
スウィング・ジャズからドゥーワップ、ジャイヴまで何でもござれのコーラス・グループ。元よりエンターテインメント性はばっちりだが、ジェイ・グレイドンのプロデュースによる本作で、AORファンの心もつかんだ。ウェザー・リポートのインスト曲をボーカルでカバーした「Birdland」が凄い!
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Birdland  >>試聴
Twilight Zone/Twilight Tone  >>試聴
James Taylor  『One Man Dog』1972
シンガー・ソングライターの名盤『スウィート・ベイビー・ジェイムス』の頃から、バックにザ・セクションという職人的ミュージシャンを使い、ソウル的な隠し味を効かせていた。この4作目は隠れファンが多い名作であり、「Don't Let Me Be〜(寂しい夜)」ではマイケル・ブレッカーのソロも聴ける。
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One Man Parade  >>試聴
Don't Let Me Be Lonely Tonight  >>試聴
Jackson Browne  『The Next Voice You Hear-The Best Of〜』1997
ジャクソン・ブラウンは別にAORというわけではないが、ジェイムス・テイラーと並んで2000年代に入った今も、確固たる自己のスタイルを貫く永遠の少年的なところが熱心なファンの心を捉えて離さない。アルバム・アーティストという意味ではまさしくAORかも。初期の4枚には青春が詰まっている。
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Running On Empty  >>試聴
Late For The Sky  >>試聴
Daryl Hall&John Oates  『Whole Oats』1972
75年に「サラ・スマイル」で一般的な人気を獲得する前の、アトランティックに残した2作目であり、フォーキーAORの傑作。フィリー・ソウルのマナーで作り上げた70年型ブルー・アイド・ソウルとしても貴重なもの。「Goodnight And Goodmorning」はセシリオ&カポノがカバーした。
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Goodnight And Goodmorning  >>試聴
Lilly (Are You Happy)  >>試聴
Michael McDonald  『If That's What It Takes』1982
ドゥービー解散間際に出したソロ1作目で、「I Keep Forgettin'」がヒット。ソウルフルなボーカルに磨きがかかる。
Average White Band  『Warmer Communications...And More』1978
「Pick Up The Pieces」や「Cut The Cake」のヒットを生んだ白人ファンク・バンド。AOR寄りになってメロウな傑作に。
The System  『Don't Disturb This Groove』1987
AOR/フュージョン系の隠れた名盤。シンセで組み立てるテクノ系ファンクは、アーバン・メロウとしても絶品。
David Foster  『The Best Of Me』 1983
エア・プレイでロマンティックなハードAOR路線を確立。シカゴ他の数え切れないプロデュースを経て、今や超大物。
Danny O'Keefe  『Breezy Stories』1973
ダニー・ハサウェイも参加した、シンガー・ソングライターのアルバムとしてはフリー・ソウル的な匂いプンプンの名作。