創造意欲に満ちたアーティストたちの情熱によってソウル・ミュージックの基盤が固められたのは、おもに60〜70年代のことだ。つまり極端にいえば、80年代は「すでに完成された時代」だと解釈することもできる。デジタル機材の浸透はアーティスト側の作業効率を高めたし、MTV文化の盛り上がりはリスナーの消費姿勢を変革させたので、どちらかといえば新しいなにかが生まれにくい時代であったのだ。
しかし当然ながら「だから80’sはダメ」ということではなく、この10年のソウル・ミュージック・シーンにもいくつかの大きなムーブメントが生まれ、そこから多くの優秀なアーティストが生まれた。そしてそれらの多くは年代的に、現在の30〜40代の青春時代とも微妙にリンクしている。だからね、そういう意味でも見逃せないんですよ。
まずは70年代 AORの流れともリンクしながら、普遍的な魅力を訴えかけたブラック・コンテンポラリー。白人層までを巻き込むクロスオーバー・ヒットを実現させたライオネル・リッチーやフレディ・ジャクソンに代表される、「大人のためのソウル」だ。そしてブラック・コンテンポラリーの延長線上に位置し、「Sweet Love」でおなじみアニタ・ベイカーを筆頭とする逸材を生み出したカテゴリーがクワイエット・ストーム。都会的な雰囲気を重視したラジオ・プログラムに端を発するだけあって、甘く落ち着いたムードが魅力。
同時にメイズ・フィーチャリング・フランキー・ビヴァリー、アトランティック・スター、ミッドナイト・スター、シャラマーなどの歌って演奏できるボーカル&インストゥルメンタル・グループ、そしてウィスパーズ、リヴァート、ニュー・エディションなどのボーカル・グループに逸材が多かったのも80年代の特徴。70年代のソウルやファンクの流れを、正統的に受け継いだ人たちだという見方もできる。
そんななか、ちょっと気になるのがファンクだ。先に触れたデジタル機材の影響で多くのバンドを経営難に追い込んだだけに、80年代はファンクにとっての暗黒の時代ともいえるからだ。しかしそんな状況でも、ザップやプリンスなどがしっかり活躍している。そしてファンクをベースとして80年代後期に大きな波をもたらしたものとしては、やはりテディー・ライリーが生み出したニュー・ジャック・スウィングを忘れるべきではない。ハネる独特のビート感は、いまなお説得力抜群だ。
(Text/印南敦史)