「新生ブルーノート20周年記念公開録音シリーズ」として、第1弾の
寺井尚子&
松永貴志グループ
「クール・ストラッティン」、第2弾の
小林桂&松永貴志
「ラウンド・ミッドナイト」に続く第3弾が、現代ジャズ/ジャム・バンド・シーンの奇才、ソウライヴによるレコーディングだ。
今回レコーディングされたのは、ソウル/ファンク・グループの大物、
アイズレー・ブラザーズが69年に放ったゴスペル・ファンク・ナンバー「イッツ・ユア・シング」(全米2位を記録)。モータウンからT-Neckに移籍し、後のファンク・スタイルの土台となった記念すべきナンバーだ。
ソウライヴはこの曲を、ドラマーのアラン・エヴァンス自らがボーカルを取り熱唱。ステディに弾むドラムとベース(オルガンで出している)のリズムに、JB's風ホーン・セクションが絡み、‘It's Your Thing〜’とアランが歌い出すと、観客がウォーッと沸く。黒い!大蛇がうねり回るような強靭なこのグルーヴ感、間奏のサックス・ソロもギター・カッティングも粘っこくて泥臭い。最高のソウル・ジャズだ!
R&Bやヒップ・ホップも好んで聴く新世代の感性で、60年代に大衆受けしたオルガン・ジャズ/ソウル・ジャズを演奏するのがソウライヴ。
ニューヨーク生まれのニール・エヴァンス(オルガン)、アラン・エヴァンス(ドラム)の兄弟が、マイアミ出身でボストンでレタスというバンドを組んでいたエリック・クラズノー(ギター)とライブ・ハウスで対バンになたことをきっかけに、一緒に活動を始めるのが99年の3月。オルガン、ギター、ドラムという、オルガン・ジャズの先駆者
ジミー・スミス(1928年〜2005年)以降の定番オルガン・トリオの編成で、ミニ・アルバム『ゲット・ダウン!』を制作。ソウライヴという名前(ソウルとライヴの合成語)の通り、ライブに力を入れてに力を入れて知名度を上げると共に、『ターン・イット・アウト』(2000年)がインディ・ジャズ・アルバムとして異例の売り上げを見せた。
グルーヴィーなインストを中心に即興演奏するジャム・バンド・シーンの盛り上がりと重なり、彼等はジャム・バンドとしても熱狂的な支持を受ける。そして、遂にメジャー・レーベルと契約したのがブルーノートだった。彼等はブルーノートから、01年にメジャー・デビューとなる
『ドゥーイン・サムシング』、アルト・サックス奏者を正式メンバーとした
『ネクスト』(02年)を発表。再び、原点である3人組に戻ってライブ盤『ソウライヴ』(03年)をリリースし、新生ブルーノートが、メデスキ、マーチン&ウッドやノラ・ジョーンズなど時代を象徴するアーティストを送り出すのに合わせ、ソウライヴ自身も大きな注目を集めていくのである。
今年4月には、新作『ブレイク・アウト』、5月にはベスト盤の
『ソウライヴ・ベスト〜ステディ・グルーヴィン』が立て続けにリリースされた。ベスト盤に収録された曲では、1作目からの、タイトなリズムで切れ味鋭い
「Solid」、ジェイムス・ブラウン風ファンク・インスト(フレッド・ウェズリー参加)の
「Doin' Something」。2作目からの、壮大なイメージが膨らむゆったりめの
「Alkime」をはじめ、ライブ盤からの、ジミ・ヘンドリックス+ジェフ・ベック風なインプロヴィゼーションの嵐の
「El Ron」、オーソドックスなファンク・ジャズ
「Dig it」など、素晴らしいテイクが並ぶ。スティーヴィー・ワンダーのカヴァー
「Golden Lady」も嬉しい1曲だ。
最後に、今回配信のみで販売される
「It's Your Thing」であるが、同じブルーノートから、グルーヴィーなジャズ・ギターを弾かせたらこの人の右に出るプレイヤーはいない、
グラント・グリーンが70年録音の
『Alive !』でカヴァーしているので、是非聴き比べを。
(Text/遠藤哲夫)