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『プレーリー・ウィンド』は、ニール流のゴスペル・アルバムでもある。最後の収録曲「ホエン・ゴッド・メイド・ミー」が、もろにゴスペルということもあるし、録音に使用されたマスター・リンクというスタジオも元は教会で、ナッシュビル自体が、白人霊歌(セイクレッド・ソングス)の本拠地でもある。「ノー・ワンダー」でもゴスペルっぽいコーラスが聴けるし、今年の6月に亡くなったニールの父親の思い出を歌った「ファー・フロム・ホーム」や「プレーリー・ウィンド」は、思いのほか南部っぽい泥臭い音になっているが、大草原をモチーフに父親への祈りを込めている。エルヴィス・プレスリーのことである「ヒー・ワズ・ザ・キング」や、ハンク・ウィリアムスが使っていて、今はニールの手元にあるギターを歌った「ジス・オールド・ギター」も、そういえば神に捧げるような歌ではある。 |
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「すべての夢を追いかけていたら
道に迷ってしまうかもしれないよ」

この言葉を、かつて“黄金の心(Heart Of Gold)”を探し求め、終わりのない夢の中を彷徨い続けていた男の諦観とみるか、または悟りと取るかは難しい。ニール・ヤングも60歳を越えて、老年期にさしかかろうとしている自分を客観視できるようになったということか?

上の言葉は、ニールの新作『プレーリー・ウィンド』の冒頭の曲「ザ・ペインター」に出てくる歌詞だが、この歌詞の前には、“僕の後ろには長い道 前にも長い道”とあることから、決して前に進むのを止めたわけではないと思う。しかし、余計な詮索かもしれないが、ニールはこのアルバムにとりかかる直前に脳に動脈瘤が見つかり、録音中にも診察を受けながら作品を完成させ、その後に手術を受けた。この影響が、今回の作品にも影を落としているというか、どことなく昔を振り返る、郷愁が深く漂う作品になっている気がする。一時は合併症をともなって意識を失うところまで行ったらしいが、現在は本作のプレミア・ライブ(映画化される予定)も行い、無事に活動を続けている。

その8月18日、19日の2日間に渡り、ナッシュビルのライマン・オーディトリアム(カントリーのメッカとして知られる)で行われたコンサートは、一部は『プレーリー・ウィンド』をアルバムの曲順のまま再現し、2部は過去のヒット曲をプレイするという、2年前の『グリーンデイル』と同じような構成。ただ、2部で演奏されたのは、エレクトリック・セットではなく、アコースティック主体のフォーク/カントリー色の強いもの。あの『ハーヴェスト』から「孤独の旅路」「老人」「ダメージ・ダン」が歌われたそうだ。

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| 『ハーヴェスト』 |
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『ハーヴェスト・ムーン』 |

今回の『プレーリー・ウィンド』は、72年のニールの代表作(全米1位)である『ハーヴェスト』、それから20年後の同窓会のような『ハーヴェスト・ムーン』(92年)に続く、“ハーヴェスト3部作”の最後を飾るアルバムである。3部作ということを抜きにしても、この3枚には共通する情感や風景を感じる。広大な自然や夢について歌われ、ドラマティックであると同時に、どこか寂寥感というか、孤独感を滲ませる『ハーヴェスト』の世界。円熟した表現力で現実批判を交えながらも、寓話のような叙情の世界を聴かせた『ハーヴェスト・ムーン』。そして、大草原を吹き抜ける風に乗って、アメリカを俯瞰するようなルーツ回帰のサウンドを響かせる『プレーリー・ウィンド』。穏やかでいて、一筋の光にすがりつくような声が切ない。その声で、ニールは神への疑問を投げかける。

「彼の名の元に行われたさまざまな戦争を 想定していたのだろうか?
神様が僕を作った時」
(Text/遠藤哲夫) |
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