やはりマライアは強い。
ポピュラー音楽のシーンで“歌姫”と呼ばれるアーティストは沢山いる。セリーヌ・ディオンやホイットニー・ヒューストン、ジャネット・ジャクソンやマドンナもそうだろうし、エンヤも元祖歌姫のような存在だ。しかし、セールス、チャート成績的に言って世界最高の歌姫はマライア・キャリーということになるだろう。 マライアは2001年4月に、長年活躍したソニー・ミュージックからEMI/ヴァージン・レコードに約7000万ポンド(約134億円)で移籍したが、神経衰弱による入院騒ぎや、初主演映画『グリッター』の興行不振などで契約破棄されてしまう。その後、ユニバーサル傘下のアイランド/デフ・ジャムと契約し、2002年に『チャームブレスレット』をリリース。通算7作目となるこのアルバムは、爆発的なヒットには至らなかったが4度目の来日も果たし、マライア健在を印象付けた。そして、遂に3年振りの『MIMI』で劇的な復活を遂げる。 新生マライアを象徴する、“あの声”が戻ってきたアルバムだ。“MIMI”とはマライアのニックネームであり、本来の自分の姿をもう一度取り戻すために、この「ミミの解放」と名付けられたアルバムが完成した。1stシングル「イッツ・ライク・ザット」(最高位2位)に続く、「ウィ・ビロング・トゥゲザー」がビルボード・ヒット・チャートで14週連続1位を記録。95年末の、ボーイズUメンをフィーチャーした「ワン・スイート・デイ」の16週連続第1位には及ばなかったものの、「Return Of Voice」と評され、原点回帰と言える圧倒的な存在感が戻ってきた。 '98年にリリースされた、彼女のNo.1ヒットを集めた『#1's(The Ones)』は、タイトル通り全米1位の曲(この時点でのNo.1ヒット12曲全てが収められたベスト盤でないところが凄い)を収録したアルバムで、日本だけでも350万枚のセールスという驚異的な数字を残している。アメリカン・ドリームの体現者となったマライアの集大成的なアルバムでありながら、ここも単なる通過点に過ぎなかった。この後に『レインボー』があって、精神的・肉体的なトラブルを乗り越えて『MIMI』がある。2005年度(第48回)のグラミー賞最多ノミネートに輝く本作は、既に世界で700万枚を売り上げているが、エスニック・ビートを取り入れた「イッツ・ライク・ザット」から、「ウィ・ビロング・トゥゲザー」「シェイク・イット・オフ」への流れ、スヌープ・ドッグやトゥイスタ、ネリーといったラッパーを迎えてのヒップ・ホップ・テイストも無駄を削ぎ落としたようなサウンドで、何処かこれまでのラッパー使いのトラックとは違った印象。ネプチューンズやカニエ・ウェストといった旬のプロデューサーを迎えても、コントロールできるだけの力量がマライア自身に備わっており、あの声もブラック色にこだわることのない、自由な輝きを取り戻している。 『MIMIスペシャル・エディション』が11月に発売となり、輸入盤では『MIMI - Platinum Edition』なるものまで出現した。ここからシングル・カットされた切ないバラード「Don't Forget About Us」を聴くと、デビュー・ヒット「ヴィジョンズ・オブ・ラブ」を思いだしてしまう。あれから15年、マライアはまた新たな地平へと踏み出した。セクシー・ダイナマイト振りはそのままに…。 (Text/遠藤哲夫) |









