映画『ブリジット・ジョーンズの日記〜きれそうなわたしの12か月』の主題歌「エヴァーラスティング・ラヴ」の大ヒットも記憶に新しい、イギリスが生んだ超大型ボーカリスト/ピアニスト、ジェイミー・カラム!全世界で250万枚を売り上げたメジャー・デビュー作『トゥエンティサムシング』に続くセカンド・アルバムが、遂に登場である。
甘くハスキーな歌声と力強いピアノで、「スニーカーを履いたシナトラ」とも称された、UKジャズ・シーンの貴公子=ジェイミー・カラムであるが、彼の音楽の才能はジャズだけに留まらなかった。ニルヴァーナやサウンドガーデンを聴いて育った世代だけあって、そのロック・エナジーは、音楽のカテゴリーを越えて、幅広いリスナーの心を捕らえた。『トゥエンティサムシング』においても、ジャズ・スタンダードのカバーと同列に、ジミ・ヘンドリックスやレディオヘッドのナンバーが並び、ロック・フェスとして有名なグラストンベリー・フェスティバル(日本のフジ・ロックにも出演)で、オーディエンスを一つにするほどのパワーを持つ。
セカンド・アルバム『キャッチング・テイルズ』は、本国イギリスでは2005年9月にリリースされ、アルバム・チャートの4位を記録、アメリカでもビルボード誌「トップ・コンテンポラリー・ジャズ」チャートで1位となっている。
「よくソングライターは、“アイディアは天から降りてくるもの、それをこの手で捕まえる”という表現を使うけど、それはまさに、今年の初めの頃、僕に起きたことだ。僕の心のアンテナは“物語”というものにとても敏感になっていた。それゆえ、今回のレコーディングは短期間で行われたんだ。それはまるで、曲を虫のようにネットで捕まえて、CDという虫かごに生きたまま閉じこめた感じ。だから『キャッチング・テイルズ』(物語を捕まえる)なんだ」
と本人も語るように、ジェイミー本人の勢いを物語るように多彩な楽曲で構成されている。 ゴリラズでもお馴染みのダン・ジ・オートメイターがプロデュースした、1stシングル「ゲット・ユア・ウェイ」は、ヒップホップの手法を生かして、アラン・トゥーサンの「Get Out My Life Woman」をサンプリングしたダンス・トラックとなった。他は、前作に引き続きスチュワート・レヴィンがプロデュースしており、ピアノ弾き語り風のどこかビリー・ジョエルを思わせる「フォトグラフ」「21stセンチュリー・キッド」といったオリジナル曲から、ロビー・ウィリアムスを手掛けたガイ・チェンバースとの共作「ロンドン・スカイズ」「オー・ゴッド」などのキャッチーで叙情味に溢れる曲、兄のベン・カラムとの共作となる2ndシングル「マインド・トリック」や「マイ・ヤード」のグル−ヴィーなリズムに乗った曲と、ジャジーな感覚を残しながらもポップで思わず口ずさみたくなるトラックが並んでいる。そして、得意中の得意のスタンダード・カバーとして、今回も「アイ・オンリー・ハヴ・アイズ・フォー・ユー」「アワ・デイ・ウィル・カム」の2曲を取り上げている。それぞれ、アート・ガーファンクルやフランキー・ヴァリなどのカバーでも有名だ。
この少年のような純粋さと奔放な才能、そしてオーガニックなサウンドが結晶した『キャッチング・テイルズ』は、間違いなく現代のスタンダードとなるだろう。
(Text/遠藤哲夫)
大学時代に自主制作で2枚のアルバムを出しているジェイミーだが、2枚目の『ポイントレス・ノスタルジック』がインディのジャズ・レーベル、キャンディードからリリースされ、全英でのヒットにつながった。そんな中、ユニバーサルUKと100万ポンドという破格の金額で契約を結び発表されたのが本作。コール・ポーターの「I Get A Kick Out〜(君こそ心ときめく)」や「What A Difference〜(縁は異なもの)」といったジャズ・スタンダードで現代ジャズ・メンとしてのポテンシャルを示しながら、レディオヘッドの「High & Dry」、ジミ・ヘンドリックスの「Wind Cries Mary」、そしてジェフ・バックリーの「Lover, You Should Have Come Over」のロック・カバーが違和感なく並ぶ。何と「Frontin'」はN.E.R.D.のカバーだから、この間口の広さには驚く。
イギリスのパワー・ポップ・バンド、SNUGのベーシストだったのがエド・ハーコート。本作がソロ・デビュー作で、これまでに3枚のソロ作(+EP盤1枚)をリリースしている。バッドリィ・ドラウン・ボーイやボニー・プリンス・ビリー等に近い、幾分ダウナーなウィスパー・ボイスが特徴。この温もりのある歌声は癖になる。ジェイミー・カラムのセカンドで「Back To The Ground」を共作している。