ハード・ファイがNHK BS-1で放送されたドキュメンタリー番組『地球街角アングル〜失業青年をプロのミュージシャンに〜』に出ていたそうだ。ブレア政権による失業対策「ニューディール政策」が、若者の失業率を減少させることに成功した、というような内容らしいが、音楽的才能にあふれる失業青年へ音楽教育を無料で提供するのが、失業対策として抜本的なものなのか?きれいごとのような気もしないではない…。
今でこそポピュラーな人気を得て、ハッピーなレゲエ・バンドと思われているUB40も、80年の結成当時は、ポスト・パンクと2トーン/スカ・ブームの間で、イギリス政府に“No”を突きつけた先鋭的なバンドだった。76年のセックス・ピストルズの出現以降、パンク・ロックの嵐が吹き荒れ、やがてブームは沈静化したが、“パンク・スピリット”という、社会へ向けて、既存の権利や体制に向かっての不満や破天荒な怒りの感情は若者が持つ特権であることは、変わらないはずだ。このハード・ファイというグループも、その意味では十分にハングリーでパンクなバンドである。 「俺は成功したいんだ」。リーダー格のリチャード・アーチャーはそう語る。ロンドン郊外、ヒースローの近くのステインズ(スラム地区のような場所らしい)の公営アパートから出てきた貧しい青年のもとに集まったのは、同じように失業中だったドラマー、スティーヴ・ケンプ。オーディオ・ショップで働いていたギタリストのロス・フィリップス。害虫駆除会社で死ぬほどつまらない毎日を過ごしていたベーシストのカイ・スティーヴンスという面子だ。地元の工業用倉庫で約300ポンドをかけて自主制作した『Stars Of CCTV』は、荒々しさをともなうダブの要素を取り入れ、けばけばしくてファンクなパンクにまみれつつも哀愁味がある音楽だった。バンド名の由来は、彼等がリー・スクラッチー・ペリーの大ファンだったことから、彼のスタジオで作り出されるサウンドをリー自身が“HARD-Fi”と表現していたことから来ている。 アルバム・タイトルの“CCTV”とはClose Circuit Televisionの略で、イギリスのいたるところに設置されている、警備・防犯用の監視カメラのこと。「ストリートを歩けば俺たちは常に監視されている。つまりストリートは俺たちのステージで、誰もがストリートではCCTVのスターになり得るっていうこと。セレブでなくても有名人でなくても、俺たちのような、普通の男、誰もがストリートではスターなんだってことが言いたかったんだ。それともうひとつは、なんで“常に俺たちは監視されなきゃいけないんだ”ってことも考えろよってことさ。」とリチャードは語る。 この自主制作盤『Stars Of CCTV』がMTVやRadio 1に注目され、2004年にはメジャーの英アトランティックと契約。アルバムは全英アルバム・チャート初登場6位を記録し、ストリートのヒーローとなった。今ではクラッシュを継ぐバンドとして、もてはやされているらしいが、イギリスで最も熱いバンドであることは間違いない。 ファースト・シングル「Cash Machine」のビデオ撮影は、究極のゲリラ・ギグと言えるもので、ヒースロー空港のフェンスを乗り越え、メインの滑走路の基点で着陸しようとしている飛行機が頭上30フィートを飛んでいる中、1時間かけて撮影を行ったもの。やはり、ぶっ飛んでいる連中だ。スカのリヴァイヴァルが起こっている中、ハード・ファイの音楽はディスコとパンクとダブを組み合わせた“ディスカ”(disco+ska)と呼ばれたりもするが、「Unnecessary Trouble」や「Hard To Beat」「Middle Eastern Holiday」のキャッチーで力強いメロディは、フランツ・フェルディナンドなんかを蹴落としていくに違いない。(Text/遠藤哲夫) |








