クラプトンの歌には、苦悩の影と男の色気が同居している。それなりの人生経験を積まなければ決して表現できない味わいの深さだ。若くして“スローハンド”の異名をとり、それこそ全世界のギター・キッズから神のような存在と慕われたエリック・クラプトン。ヤードバーズからジョン・メイオール&ブルース・ブレイカーズ、クリーム、ブラインド・フェイスというグループを通して確立されたイメージを裏切るように、アメリカに渡り南部音楽の影響を受けたデレク&ザ・ドミノス(「いとしのレイラ」はこの時のヒット)を結成し、アイデンティティを求める旅が始まる。
その後のソロ活動でブルースを血肉化し円熟味を増していくクラプトンが、新たな転機を迎えたのが80年代半ばだ。フィル・コリンズのプロデュースで新境地を切り開き、90年代にはグラミー賞の常連になるほど幅広いファン層を掴むことになる。『アンプラグド』での大成功(全世界で1500万枚以上売れた)は日本でもOL層のファンを生み、自らのブルース・ルーツへの回帰が新たなステイタスとなった。クラプトンそのものがブルースなのである。
その変化が如実にわかるのが、80年代から90年代にかけての時期であり、幾多の苦難を乗り越えて安息の地を見つけたクラプトンの生き様にこそ、本物のブルースを感じる。(Text/遠藤哲夫)




















