洋楽で、日本でもスーパースター的人気を誇るロック・バンドといえば、やはりボン・ジョヴィだろう。ローリング・ストーンズでも、エリック・クラプトンでも、U2でもないのだ。ボン・ジョヴィは、2006年4月の13度目の来日を含め、過去約20年間における来日ツアーで、スタジアム公演が通算35回という記録を樹立(ローリング・ストーンズの29回を抜いた)。観客総動員数は120万人に及ぶという。このことからも、彼らの人気の凄さがうかがい知れるが、今年9月に発売されたニュー・アルバム『Have A Nice Day(ハブ・ア・ナイス・デイ)』が、オリコン総合アルバム・チャート初登場1位(本国のビルボード・チャートは第2位)に輝いた。ライブだけでなく、きちんとレコード(CD)も売れるバンドなのである。
ボン・ジョヴィは、84年にデビューした、アメリカのニュージャージー州出身のハードロック・バンドだ。当時のアメリカの音楽シーンは、イギリスからのヘヴィ・メタル勢が人気を博し、それまでの産業ロック(ジャーニーやボストンとか)が一気にハード・ロック/ヘヴィ・メタル化した時期でもあった。LAメタルがブームとなり、ヴァン・ヘイレンが『1984』で世界制覇した頃に登場したのがボン・ジョヴィだった。LAメタルの流れを汲みながらも、アイドル的な華やかさも備えていた彼等は、産業ロック的なわかりやすさをハードかつポップなサウンドで更に大衆受けするものにした。日本でも、歌謡曲やニュー・ミュージック(今でいうJ-POP)しか聴かないような音楽ファンを、洋楽の世界へと導いた功績は大きい。 デビュー作『BON JOVI(夜明けのランナウェイ)』は、アメリカではそれ程の成功を収められなかったが、日本では“哀愁味”を帯びたハード・ポップが認知されて、シングル「夜明けのランナウェイ」でいち早くブレイクしている。彼等が全世界的にブレイクするのは3作目の『Slippery When Wet(ワイルド・イン・ザ・ストリート)』においてだ。開き直ったように、ヴァン・ヘイレン型の派手なハード・ロックから、甘さも含んだラヴ・バラードまで、アメリカン・ロックの王道を呑み込みながら、計算され尽くしたポップなアルバムを完成させた。「禁じられた愛」と「リヴィン・オン・ア・プレイヤー」を今でも一緒に歌えるファンは多いだろう。 大成功を収めた彼等は4作目『New Jersey』で土着的なサウンドを強め、「バッド・メディシン」という名曲も残すが、今度はバンド自体が解散の危機に瀕する。ボン・ジョヴィとして再び結集したのは、前作から5年ぶりとなる『Keep The Faith』だ。ジョンの書く歌詞は、人間的な成長と葛藤を歌い、内省的で味わい深いものとなった。彼等はグランジの波をかいくぐりながら、自己成長を遂げてきた。10周年を記念してリリースされたベスト盤『Cross Road』(94年)からは「オールウェイズ」が大ヒット。その後、21世紀を迎えてもボン・ジョヴィはボン・ジョヴィのまま、世界に君臨するロック・バンドとして勢いは衰えるどころか、新しいファンを生み出しながら現在に至っている。 2002年の『Bounce』から3年振りとなる、9作目のオリジナル・アルバム『Have A Nice Day』が売れまくっている。現在“トヨタNew RAV4”のCMソングで流れているのが、シングル・カットされた「ハヴ・ア・ナイス・デイ」。アメリカ大統領選挙で真っ二つに割れた国民に向けてのメッセージでもある。意見の違いや宗教的な相違といった壁を乗り越えて、お互い受け入れ合う、包み込んでいくことが大切と説く。そこから自分の人生を見つめていく。「ウェルカム・トゥ・ウェアエヴァー・ユー・アー」や「ベルズ・オブ・フリーダム」にもそのメッセージは生きている。メッセージ色の強いアルバムを、彼等はハード・エッジなギター・サウンドと皮肉っぽいジャケで包んだ。自分らしくあるための勇気、それが“ハヴ・ア・ナイス・デイ”! (Text/遠藤哲夫) |







