2008年ロック界最大の奇跡!
あのエイジアがオリジナル・ラインナップで、83年の『アルファ』以来25年ぶりとなるニュー・スタジオ・アルバム『フェニックス』を完成させた。これはまさしく、永劫の時を超えて甦る不死鳥伝説にふさわしい、壮大なるロマンの新たな幕開けである。
エイジアは82年リリースのデビュー・アルバム『詠時感〜時へのロマン』が全米チャートで9週連続1位を記録、全世界で1000万枚を越えるセールスとなり、ロックの歴史に燦然と輝く金字塔を打ち立てたグループだ。70年代において、キング・クリムゾン、イエス、エマーソン・レイク&パーマーというプログレッシヴ・ロックを代表する名門バンドに在籍していたジョン・ウェットン(vo,b)、スティーヴ・ハウ(g)、カール・パーマー(ds)に、バグルス〜イエスと渡り歩いたジェフリー・ダウンズ(key)を加えた4人で結成されたスーパー・グル−プ、それがエイジアだった。
『詠時感〜時へのロマン』からは、「ヒート・オブ・ザ・モーメント」「時へのロマン(Only Time Will Tell)」が大ヒット。“3分間のプログレ”ともいわれたキャッチーでメディックなロックは、“産業ロック”と揶揄されたり、コアなプログレ・ファンからソッポを向かれたりしながらも、緻密な構築美と圧倒的なテクニックに裏打ちされたポップ・サウンドで、新たなファンを掴んでいく。続く『アルファ』も全米6位まであがり、「ドント・クライ」もヒットして引き続き成功を収めるが、前作のイメージを意識しすぎてか、大仰なアレンジとキーボードがあまりに全面に出すぎてしまった感がある。
『アルファ』リリース後に、ジョン・ウェットンとスティーヴ・ハウとの間の確執が表面化。ウェットンが一時脱退し、元エマーソン・レイク&パーマーのグレッグ・レイクをメンバーに迎えて初来日公演(83年12月)という荒技もやってみせるが、ウェットンが復帰しての3作目『アストラ』には、スティーヴ・ハウの名前はなかった。以降、エイジアは、メンバー交代を繰り返しながらも、ジェフリー・ダウンズを軸として『AQUA』『ARIA』『ARINA』『AURA』『SILENT NATION』を発表。2004年頃から、ウェットンとダウンズはアイコン(iCon)という別プロジェクトでの活動もスタートさせており、これが今回のオリジナル・メンバーでの再結成につながった。昨年3月の感動の日本公演も記憶に新しい。
『フェニックス』は、まさしく奇跡の復活劇にふさわしいタイトルであるが、これはウェットン自身の生死にかかわる心臓バイパス手術からの無事の帰還を意味するのかもしれない。25年の時を経て、お互いにリスペクトし合い、独善的ではなくなったというメンバー同士のいい関係がサウンドにも現れている。さすがにデビュー・アルバムの時のような衝撃性は薄れたものの、ドラマティックな展開や美しい旋律は、往年のエイジアそのままである。ファンの期待に応えるメンバー4人の新たな挑戦が見事に結晶化したアルバムといえるだろう。
冒頭の「ネヴァー・アゲイン」から、ウェットンの哀愁をともなったパワフルなボーカルが炸裂。これぞエイジア・サウンド。アカペラ・コーラスとファンファーレのイントロで仰々しくはじまる「ナッシングズ・フォーエヴァー」も、マイナー節全開のいかにもエイジア的ナンバー。『アルファ』の「偽りの微笑み」そっくりのイントロが流れてきてビックリの「ヒロイン」も男の哀愁ほとばしるバラード。全体的にバラード系の曲が多い印象を受けるが、超ポップな「アリバイズ」(4人による唯一の共作曲で、今まで未発表だった「Jodie」の完成版)や、「ドント・クライ」を彷彿させる「シャドウ・オヴ・ア・ダウト」などでは、80年代風のサウンドとあいまって思いっきり郷愁をそそる。
今回のアルバムでは2曲の組曲風ナンバー「スリーピング・ジャイアント〜」「パラレル・ワールズ〜」も収録しプログレ的手法も展開しているのに加え、スティーブ・ハウ作による「ウイッシュ・アイド・ノーウン・オール・アロング」では、ラテン・タッチも取り入れたアレンジが新鮮だ。最後の「アン・エクストラオーディナリー・ライフ」は、ライブ・アンセムになりそうなファン待望の名曲といえる。昂揚感あふれるサビにライブの期待がいやがうえにも高まる。5月8日からスタートするオリジナル・エイジア日本公演では、1日限りのスペシャル・ライブとして“『詠時感〜時へのロマン』完全再現”を追加公演でやるそうだ。これも楽しみだ。
(Text/遠藤哲夫)