「私にとってジャンル分けなど無意味なこと」と語るカール・ジェンキンス。アディエマスとして発表した、クラシックでもなく、ポップスでもない『Songs Of Sanctuary(聖なる海の歌声)』が、全世界で100万枚以上のメガ・ヒットを記録したのは1995年のことだ。
アディエマスとは、イギリスの前衛ジャズ/ロック・バンド、ソフト・マシーンの後期メンバーだったカール・ジェンキンスが、ソフト・マシーンの創設メンバーの一人であるマイク・ラトリッジ、それに南アフリカ出身の女性ボーカリスト、ミリアム・ストックリーを加えて結成したプロジェクトである。元々はデルタ航空のCMソングとして作られた「Adiemus(聖なる海の歌声)」という曲が話題となり、エスニックな感覚をプラスしてアルバム化したのが、前述のデビュー作となる『Songs Of Sanctuary』だった。日本ではヒーリング・ミュージックのイメージを強調するために、イルカのジャケットに差し替えられてリリースされ、大ヒットとなった。更に「聖なる海の歌声」は、インストものとして国内では異例の100万枚を売り上げ、社会現象とまで呼ばれた、ヒーリング・コンピレーション盤『フィール』の冒頭を飾るトラックにも収録された。その後、アディエマスが『フィール』の続編や『イメージ』といったコンピ盤の常連となるのは言うまでもない。
アディエマスの特徴は、ヨーロッパのクラシック音楽を土台としながら、そこにトライバル(部族的)なボーカル・パートやエスニックなパーカッションを加えることで、安息に満ち、かつ壮大な“地球声楽曲”を創り上げるところにある。ミリアム(や他の女性コーラス)によるビブラートのない歌い方は、その少年にも似た不思議な声と、カールによる造語(彼等の歌詞はすべて造語)と共にアディエマスの世界を強くイメージ付けるものだ。
1作目のみでマイク・ラトリッジは脱退してしまうが、アディエマスは2作目『アディエマス II―蒼い地球の歌声』を制作。フルのシンフォニー・オーケストラと世界の打楽器(サンプリング)を駆使した、7楽章から成る大作である。彼等はフィンランドで公演を行った際に参加した地元のシンガー達を、正式にアディエマス・シンガースとして迎えて、3作目の『アディエマスIII−永遠の舞踏会』を発表する。6世紀にもわたるダンス音楽の歴史をアディエマス風に綴った意欲作であるが、日本ではNHKのドキュメンタリー番組『世紀を越えて』(1999〜2000年)のテーマ曲に書き下ろした「Beyond The Century(世紀を越えて)」が独自に大ヒット。今でも、アディエマスというとこの曲を思い浮かべる人は多いはず。
この時点で、1作目から3作目までのアルバムから選曲された『アディエマス・ベスト』(The Journey The Best Of Adiemus)がリリースされた。オリジナル作には収録されていなかった「世紀を越えて」や「エレーシア」「カンティレーナ」といった名曲を含む、全19曲入りのお徳盤である。ただし、ショート・バージョンに編集されている曲もあるのでご注意。その後、ケルト音楽をテーマにした4作目『アディエマスIV−遥かなる絆』、ライブ盤、男性ボーカルも加え楽器としてのボーカルを追及した5作目『ヴォーカリーズ』と順調にリリースを重ね、最新作はカール・ジェンキンスのソロ・プロジェクト『レクイエム』で、日本の俳句(辞世の句)を歌詞として取り入れた斬新な作品となっている。
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