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19世紀初頭。ロンドンのドルーリー・レーン劇場では、“キング・オブ・ロンドン”と崇められているシェイクスピア俳優エドモンド・キーンによる、シェイクスピア劇の連続公演に観衆が押し寄せていた。だが、人々が求めるのはエドモンド・キーンその人ではなく、キーンが演じる『ハムレット』『ロミオとジュリエット』『オセロー』『マクベス』などの芝居の主人公たちだった。常に演じることを強いられるキーンが、唯一、自分でいられたのは、プリンス・オブ・ウェールズとの身分を越えた関係においてであった。ヘンリー5世とファルスタッフよろしく、夜毎、下町の酒場で馬鹿騒ぎを続けることで、大道芸人上がりのアイデンティティを確認していたのだ。だが、その為に借金はかさみ、破産の危機に陥っていた。そんな友好関係も、デンマーク大使夫人、エレナ・デ・コーバーグ公爵夫人の登場で歪みはじめていた。二人は同時に、エレナを愛してしまったのだ。
プリンス・オブ・ウェールズを迎えて行なわれたデンマーク大使館での舞踏会にて、ネヴィル卿との結婚前日に婚約者のアンナ・ダンビー嬢が失踪したとの噂で人々は盛り上がる。アンナはキーンの熱狂的な信者で、キーンの舞台は欠かさず観劇する程だった。「アンナはキーンと逃げた」プリンス・オブ・ウェールズの言葉は、勿論、エレナをキーンから離そうとの悪戯ではあったが、貴族たちの格好の話題となった。そんな噂を打ち消そうと舞踏会にやって来たキーンだが…。
エレナをめぐってキーンとプリンス・オブ・ウェールズ、アンナをめぐってキーンとネヴィル卿、そしてキーンをめぐってエレナとアンナ、恋の鞘当てはシェイクスピア劇よりも複雑に進行して行く。
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