メジャーデビュー第一弾となった『さよならストレンジャー』から、昨年の末リリースの『NIKKI』まで…。くるりのアルバム全作品の配信が遂に開始した。こうやって1枚、1枚改めて聴いていると彼らは、フォトグラファーのようなバンドだな感じた。
京都・大阪間を縦断する京阪電鉄の深草駅の表示板と電車をあしらった『さよならストレンジャー』の裏ジャケにしても、それこそ、収録されている「虹」での「錆びた線路際」というフレーズ、「チアノーゼ」の「夕暮れ前の東向日駅、梅田方面ゆきのホーム」など、彼らの目に映ったリアルな風景が至るところにスクラップされている。
だから、彼らの曲を聴いていると、100人いれば100人とも同一の気持ちを味わえるはずだ。
思いを投げかける時だってそうだ。例えば、「東京の街に出てきました」で始まる名曲「東京」。「僕は何とか大丈夫です」「今夜ちょっと君に電話しようと思った」という、誰もに伝わる写実的なセリフが並ぶ。「今、自分はここにいて、目に映る景色はどうで、こんな事を感じている」んだということを包み隠さずに綴る。まるで日記ような詞。
そう、まさに『NIKKI』。「京都からやってきた」自分たちの存在を、収録に臨んだロンドンの街に語りかけるような「Bus To Finsbury」。恋をする気持ちを思いだせるかなという、つぶやきにも似た思いが印象的な「Superstar」。そして、電子音の軽快さが弾むようなポップな気分を誘う「赤い電車」は、岸田自らが愛してやまない京急電車を歌ったものだ。
彼らの表現したいことは実に明快だ。ありのままの感情が曲に写しだされているから。その上、彼らのするどい情景描写は我々の想像力をかきたてる。それはまるで、実際に自分がスナップをめくっているような感覚だ。(Text/藤村実)







