「いろんな人に、身近な孤独感や孤独の中から感じる感情を、そして、本当に声の体温を伝えられる歌い手になっていきたいと思いますので…乞うご期待です(笑)」
この言葉。タネを明かせば、最後にメッセージを、という問いへの返答である。つい最近25歳を迎えたばかりの新人シンガーの“ごあいさつ”としては、見えているものの確かさに驚いた。久嶋美さち(きゅうしまみさち、と読む)という名を、当然ご存知の方は少ないだろう。しかし、覚えておくべきだ、と。最初から言っておこう。
「歌手になりたいという憧れとは別に意思があって。民謡のコブシって時が経つにつれ味が出てくるんですね。コブシが出るまでに私は4年くらいかかったんですけど、全国大会で入賞や優勝をするようにもなって。でも、歌手になるというより、どうやって自分のオリジナルのコブシを、民謡を極められるかって一心で続けていたんです。中学を3年に進路を考えたときも『歌じゃ食えない』って気持ちがあって(笑)」
彼女の原点は、持病の喘息治療のために始めた民謡。ストイックな歌への気持ちからか、当時流行のJ-POPと自分の歌がリンクしなかったため、もうひとつの夢“人がキレイになって笑顔になる仕事”美容師の道に入る。
「本当に(美容師の)仕事のストレスなどで軽い鬱状態になってしまって。目も死んでるようなスゴい状態の時に親が来てくれて『もう、いいんじゃないか』と言ってくれて、張り詰めたものが解けたんです。それで田舎に帰り何をしようかと考えたとき、死ぬまでに一回は『食えないだろう』と思ったけど、東京で歌をやってみたいという思いが強く出たんです。それで歌手になろうと。21になったころですね」
音楽の無い人生なんて…と、ありがちなキャッチフレーズとは違う。本当に、自分を解放するものとして、彼女は歌の道を、改めて選んだ。それから4年、この「Missing You」でデビューに至った。
「私は夢を抱いて、腹を決めて東京に出てきました。両親や友達たちとも別れて、歌手になるという約束をしてきて…この歌から、犠牲にしてきたものへの強い気持ちや淋しさ、夢に勝つために戦ってる自分はこうなんだよということは伝わっていると思います。もちろん私の実体験ではありますけど、誰にとっても身近な内容だと思うんです。夢や目標の中で頑張って、負けないでいこうというのは。お父さんやお母さんの世代にも“こんな事あったわ”って(笑)」
この言葉を見るに、シンガー・ソングライターという印象を抱くかもしれない。しかし、彼女のスタンスは独特だ。
「自分より経験豊富な方に私の声からのイメージで詞を作って頂き、それを歌の中で表現する役者、女優でありたいんです。これから発表する作品では、曲ごと、メロディごとで全然違う久嶋美さちが出てくるんです…ふしぎ(笑)。次はなんなんだろう!?と次々出していきたい」
そして、自分のイメージを特定しないのと同様に、曲に特定のイメージを付けず、自由に感じてほしいという。
「あいまい、って気持ちが好きなんです。この歌は、声はなんだか引っかかるなぁ、と何度も聴いてもらいたい。特定しない、自由に感じてもらえる歌なんです。私の歌を聴いて、次の日に『なんだかモヤモヤしておかしい』と異変をきたすくらいであってほしい(笑)。私の声で、色々な人生が見えたらな。そして、聴けば聴くほど味が出るし、何年経っても聴ける歌だと思います」
長年のフェイバリットに鬼束ちひろ、そして、最近では、レコーディングの際にサウンドプロデューサーの根岸孝旨(註:GRAPEVINE、つじあやの、Coccoなどを手掛ける)に薦められたジョーン・オズボーンに衝撃を受け「飾ることなく自分を歌うことができる人になりたかった」と気付かされたという。それらの名前は、いまは目標であったり憧れであると思う。しかし、故郷の宮崎ことばが節々に出る純粋さと、自信を漂わせながら自作を語る姿の不思議なバランス感覚…恐らく、自然に出ているだけだろうが、それは人を引き付けるチャーミングさがあり、スルっと“久嶋美さちの世界”に招き入れる力を既に持っていると思う。
多くの人が、そのことに気付くとき。できるだけ早ければ嬉しいものだ。(Text/hr)








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