氷室京介の歩んできた道のりは、一見ジャパニーズ・ロックの王道に見えて、実のところ氷室自身の嗅覚を最優先にして進むかなりの獣道である。ビックネーム同士のコラボレーションとして2006年夏に大きな話題を集めたGLAY feat.KYOSUKE HIMURO名義でのシングル「ANSWER」でもそうであったように、そしてアメリカのロックシーンを席巻したミクスチャー・ロックに対する氷室流の解釈と回答を示した前作『Flollow the wind』もそうであったように、氷室京介の楽曲が帯びるスリルとダイナミズムは、彼自身の音楽的な直感や瞬発力に起因している。そして3年4ヵ月ぶりとなる新作『In The Mood』では新世代ビートパンクやポスト・パンク的なアプローチを、氷室ならではのスタイリッシュさとスケール感に吸い上げることに挑戦し、数々の成功を勝ち取った。特に「Bitch As Witch“ALBUM MIX”」「In The Nude 〜Even not in the mood〜」などのトラックは、氷室が最も得意とするビート感の強いロックでありながら、同時に2006年のロックの気分をたっぷりと含んだサウンドに仕上がっている。
重金属のような硬く重みのある芯と、ほどよく茂った植物の枝のようにしなやかで伸びやかな響き―氷室京介の歌声の中には、そんな相反する要素を同時に感じさせる“何か”がある。そして、彼が放ち続ける金属的で植物的なその“何か”は、BOΦWY時代はもちろん、今作『In
The Mood』の中でも、同じように鳴り響き、聴き手を魅了してやまない。氷室京介の歌声が放ち続ける、金属的で植物的な“何か”―それは、けして錆びることなく、枯れることのない、彼だけの“ロック”なのだ。その鮮やかな歌声に、耳を奪われてみて欲しい。
(TEXT/大山貴弘)