長らく日本のクラブ・ミュージック・シーンを牽引し続けているDJであり、コンポーザーであり、プロデューサーであり、リミキサーであり、つまりは紛う方なき天才アーティストである田中知之のソロ・プロジェクト、Fantastic Plastic Machine(以下FPM)。その存在を紹介するとき何から書けばいいか心底迷うほど、実に華やかなトピックの多いアーティストである。例えばBjorkの楽曲のリミックスを手掛けたり、RIP SLYMEの「マタ逢う日マデ」をDJ FUMIYAとともに共作していたり、最近ではCharaのシングル「Crazy for you」のプロデュースを手掛けている。
さらに例えば、ミュージシャンだけではなく、ファッション業界をはじめ様々なクリエイターからの信頼も厚く、ルイ・ヴィトンと村上隆のコラボレーション・プロダクト『superflat MONOGRAM』のアニメーション・ムービーの音楽やラーメンズの舞台音楽を手掛けたりしている。
もっと例えば、これまで彼が提供したCM曲は数知れず、最近では“軽くヤバイ”でお馴染みのサッポロビール『SLIMS』で流れていたやたら軽快なハウス・ミュージックはFPMの「paparuwa」という曲だし、ボーッとテレビを観ていたら突然FPMの曲が耳に入ってくることは日常茶飯事だ。個人的な思い入れを書かせてもらえば、総合格闘技『PRIDE』中継における試合前の“煽りV”(試合を盛り上げるために2人の選手が対戦に至るまでのストーリーを紹介するVTR)で「Reaching for the Stars」や「don’t you know?」などFPMの珠玉の名曲が使われることが多く、クラブ・ミュージックという一言では到底片づけられない抜群のポップ・センスが光るその音楽に包まれては時に狂喜乱舞し、時に涙腺を刺激されている。
ずいぶん前置きが長くなってしまったが、この度リリースされるFPMの代表曲を余すところなく詰め込んだ2枚組のベスト・アルバム『FPMB』を聴けば、あらゆる人の琴線を射抜く音楽魔術とも言うべきFPMサウンドの魅力に十二分に浸ってもらえるはずだ。フューチャリング・アーティストに中納良恵(EGO-WRAPPIN’)、BONNIE PINK、SU(RIP SLYME)、山本領平、TAHITI 80、Benjamin Diamond、VERBAL(m-flo)、MASTERS AT WORK、CLAZZIQUAI PROJECTなどなど錚々たるアーティストを迎えて繰り広げる痛快なミュージック・エンターテイメント。
ハウスをベースにしたダンス・ミュージックに様々なジャンルのサウンド・テクスチャーを吸収、昇華しここまで表情豊かなポップ・ミュージックを創造できる才能は唯一無二。ぜひこの機会に問答無用で聴いてほしい。
TEXT:三宅正一(fixed)
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FPMを世界に知らしめたディスコチューン『TAKE ME TO THE DISCO』収録。マイク・マイヤーズ主演の映画『オースティン・パワーズ・デラックス』に使用されたハッピーチューン。