眩い光だけを全身にたぐり寄せ、それを声に託し歌う。音楽を通して多くの人とつながるために。そう、まさに『きらきら』した歌がここに集光している。かつて、人の心に揺れる孤独の闇を震央で捉えるように切迫した歌を歌うことでリスナーのネガティヴィティを切り裂き、そうすることで比類なきほどリスナーと深淵な関係を築いていた女性アーティストがいた。それがCoccoだった。そんなCoccoが2001年の突然の活動休止から、本格的な音楽シーンへの復帰を果たした昨年リリースのアルバム『ザンサイアン』を経て、こんなにもポジティヴィティだけが充溢したアルバムをリリースする日が来るとは正直、思ってもみなかった。そして、本作『きらきら』は不世出の才能を持つCoccoというアーティストが新たなステージに立ったことを告げると同時に、いま僕らが本当に必要な歌だけが詰まっている傑作である、とここに断言したい。
本作のレコーディングは、Coccoの出身地・沖縄のとあるスタジオで行われた。〈燦々スタジオ〉と名づけられたそのスタジオは、国頭村という場所にある山奥の別荘をCoccoとスタッフ自らの手で改造したものだ。〈燦々スタジオ〉でCoccoたちは〈沖縄・日常・光・陽だまり・生活・手作り・世界〉というキーワードを合言葉にして制作に取りかかったという。そうして完成した全18曲。そのすべてが、とにかく優しく温かい。さらに、どの曲も一度聴けば耳に染み込んでいくようにキャッチーなメロディが中心に存在している。
アルバムのテーマソングともいえる「燦」を筆頭に「甘い香り」、「秋雨前線」、「花うた」、「小さな町」、「タイムボッカーン!」、そしてラストの包容力に満ちた響きが胸を熱くする「Never ending journey」といったエレキギターが寄り添うロック・サイド。プロデューサー兼バンドのギターを務める長田進との共作曲「In
the Garden」、「あしたのこと」、「君がいれば」、「雨水色」、「An
apple a day」、「10years」などのアコースティックギターを軸にしたを軸にしたフォーキーなナンバー。〈燦々スタジオ〉の多幸感をそのまま表現したような「Baby,After you」やジャズ・アプローチの「Tokyo
Happy Girl」、カントリー調の「ハレヒレホ」、沖縄の子守唄の「チョッチョイ子守唄」など新鮮な遊び心を感じさせてくれる楽曲群…。
できれば、どうか、全曲に触れてほしいと思う。〈燦々スタジオ〉から放たれた音楽の光線が、心中の深い場所まで穏やかに射し込むはずだ。Coocoはいま、かつてなく音楽の力を信じているのだと思う。その力がもたらすものとは、人と人が優しさの連鎖でつながることにほかならない。だからこそ、『きらきら』はCocco史上最高に折れない強さを持ったアルバムでもあるのだ。
(Text/三宅正一)