LA生まれで英語の発音も堪能な帰国子女であるとか、ゴスペル合唱団で歌唱力を鍛えたとか、歌と踊りの本格的なレッスンを現地で受けたとか、ジャネット・ジャクソン「GO DEEP」のPVにダンサーとして出演したことがあるとか……。
“R&B表現”を行なうにあたっては間違いなく武器になるであろうそれらの要因は、しかし結局のところ後付けのトピックにすぎず、それ以前にAIはR&Bシンガーとしての先天的な才能を持っているのだと思う。あるいは、歌もラップもダンスも自身の基盤として無理なくこなせる、新しいタイプ日本人とでもいうべきだろうか。
その証拠に、彼女のR&Bに借り物の匂いは皆無だ。たとえばいい例が、'03年の初頭にリリースされたシングル「最終宣告」と、その英語バージョンでジョー・バドゥンのラップをフィーチャーした「LAST WORDS」。
ゆったりとしたビートに真正面から勝負をかけるようなボーカル・ワークには情熱を柔軟にコントロールしているかのようなニュアンスがあったが、それは従来の国産R&Bには珍しいことでもあった。加えて後者には米国産R&Bかと思わせる完成度が備わっていたし、この時点ですでにAIは「選ばれていた」といっていいだろう。
つまり、続くシングルの「Thank U」と「My Friend」を収録したファースト・アルバム『ORIGINAL A.I.』で彼女が大絶賛されたことも決して偶然ではないのだ。歌に秘められた彼女の内面が聴き手を刺激したということで、日本のR&Bシーン屈指のプロデューサーとして知られるT.KURAを迎えた'04年のセカンド『2004 A.I.』がオリコンチャート初登場第3位にランクインしたことも同じようにその裏づけとなるだろう。
ここからカットされたバウンスするミディアム「After The Rain」、対照的に“Everything's OK”とポジティブに呼びかける「E.O.」は、彼女の多面的な表現力を言い表すトラックだ。そればかりか心地よいファンクの「100%」や「無限」、アコースティック・ギターとバランスよく共存する「Breathe」など様々なタイプの楽曲を聴き進めて行けば行くほど、才能の大きさを実感する。 また日本を代表するレゲエDJのBOY-KENと真正面から互角にぶつかる「エンジェル」、AFRAのヒューマン・ビートボックスを柔軟に乗りこなす「WATCH OUT!」なども、底力の強さを反映すつ強い曲だ。
だが今後の彼女の可能性を示唆するものは、もしかしたら、これまで彼女が押し進めてきたゴリゴリのR&Bスタイルではないのかもしれない。
そう思わせたのは、'05年に大ヒットを記録したポップ・バラードの「Story」だった。ここには、R&Bの範疇に収まりながら、その場を超えたなにかに突き進むようなクロスオーヴァー・アーティストとしての可能性がはっきりと反映されていたからである。
だからこそ言えること。
ここからまた、AIというアーティストはさらなる歩みを進めていくはずだ。
そして王道のR&Bであってもポップ・アプローチであっても、それがAIの楽曲である以上は今後も、彼女の歌は聴き手の感性に深く訴えかけていくことだろう。(Text/Steve Johnston a.k.a.Propmaster Sweet)







