総合TOP > リコメンドインデックス > 富澤一誠のフォークが好き! > 2008/01/30 加藤和彦
1973年のCM界はフォーク・ソングの花盛りだった。 吉田拓郎が富士フイルム、松下電器産業。鈴木ヒロミツがモービル・ガソリン。遠藤賢司が日立製作所。シモンズがフェミニン株式会社。本田路津子がハウス食品工業、マルシン商事、保谷硝子。赤い鳥がヤマハ音楽振興会。上條恒彦がグンゼの肌着、サントリー「純生」、トヨタ自動車、資生堂MG5。加藤和彦がナショナル住宅、モービル・オイル。ガロがパイロット万年筆。松井悦子(チェリッシュ)が三ツ矢サイダー。三上寛が柳屋。小坂忠がトヨタ自販。 こう並べて書くと実に壮観である。では、なぜこれほどまでにフォークがCMへ進出したかというと、やはり既成のCM作曲家にはない新鮮さがあり、それが若者たちの心をとらえ、ひいては企業の斬新なイメージ作りにぴったりマッチしていたからだろう。 そんな中でも拓郎の「ハブ・ア・ナイス・デイ」と人気を二分したCMは加藤和彦の「家をつくるなら」(73年3月20日発売)だった。これはナショナル住宅のCMとして作られたが、あまりの評判の良さに加藤のソロ・シングルとして発売されたほどだ。しかも、当時、彼はサディスティック・ミカ・バンドをデビューさせたばかりだった。ふつうなら、バンドを第一に考え、ソロは出さないものだが、それでもあえて出したほどこの曲は評判が良かったということだ。新田和長ディレクターは証言する。 「加藤君は作曲家として既に高い評価を得ていたけど、メロディーの良さもさることながら、独特のボーカル、これも良かった。ドノバンというかキャット・スティーブンスというか、彼独自のビブラートと、なんともいえないソフトで優しいうたい方。『家をつくるなら』には、そんな彼の良さが凝縮されていた。だから、あえてソロ・シングルとして出したんです」 機能だけを追求するのではなく、そこに住む人の住み心地の良さを追求したナショナル住宅のイメージにぴったりとマッチした「家をつくるなら」は“名CM曲”だったといっていい。その証拠にこのCMは今も使われている。